電車賃に気づいた日

3月中旬、電車賃の価格改定がありました。

改定日前には気づいていて、「交通費申請書変わるだろうから確認したほうがいいな」と思っていました。Slackで周知しようかとも考えたけれど、あえて控えていました。

2週間後、別の方が周知してくれました。

なぜ早く気づけたのか。そして、気づいた後にどう動くべきだったのか。

観察は足で稼ぐもの

教員時代、毎週の校舎巡回が習慣でした。

廊下を歩きながら、施設の異変、学級の様子の変化、掲示物の劣化、安全上のリスク。ダッシュボードを眺めてアラートを待つのではなく、自分の足でデータを取りに行く。

今もそれは変わっていません。オフィスに出勤するたびに、制度の変化やチームの雰囲気、業務フローの非効率に気づくことも多いです。上長は何度か変わりましたが、振り返るといつも「周りをよく見ている」と評価されていました。電車賃の件も、この習慣の延長だったと思います。

「控える」と「委ねる」は違った

電車賃の件、黙ったのには理由がありました。

会社では「いつも気づく人」というポジションに近い立場にいます。自分が先に動くと、他の人が気づく機会を奪ってしまうと考えました。教員時代の育成マインドから、あえて控えていました。

でも結果は、2週間誰も動きませんでした。

教員時代の自分なら、こうはしなかったと思います。

たとえば漢字の小テスト。5問中、最初の2問は前回の誤答から出していました。こうすれば、勉強が苦手な子でもその2問は正解できます。黒板に呼んで書かせて、花丸をつけてあげていました。正解できる仕組みを作って、その子自身が活躍する場を設計していました。

電車賃の件でも、「交通費関連、最近なんか変わりそうじゃない?」とSlackで一言振るだけでもよかった。チームの成長を考えると、私が黙ることと、気づく機会を渡すことは、まったく別のことでした。

何気ないフォローの正体

別の日、自社サービスの社内版リリースの連絡がSlackに流れてきました。

「作業の関係上、ご利用はお控えください」

読んだとき、「メンテナンス画面があれば、そもそも操作できないから安心では?」と思い、提案しました。「実装予定です!」との返答で、短いやり取りで終わりましたが、これも同じことだと思います。

自分としては何気ないフォローでも、分解すると、「お願いベース」の運用から「仕組みベース」の運用への転換を提案しています。 善意に頼る運用を、物理的に操作不可にする設計へ。Slackの文面を読んだだけで、リリースプロセスの穴を指摘していたことに気づきました。

こういった小さな観察と提案の積み重ねが、プロダクトの品質を着実に上げていくと私は信じています。

一貫しているのは「観察 → 言語化 → 仕組み」

教室でも今の職場でも、自分の動き方は同じでした。

振り返ると、いつも「観察 → 言語化 → 仕組み」の順で動いています。

  1. 能動的に観察する — 校舎巡回、出勤時の変化検知
  2. まだ誰も言葉にしていない課題を構造化する — 「お控えください」の裏にある設計の穴
  3. 属人化しない形で解決する — メンテナンス画面、テストの出題設計

SREの文脈で言えば、「アラートが鳴る前に気づける人」。

ただ、気づくだけでは属人的です。仕組みに落とすところまでやって、初めてチームの力になると思います。

仕組みで人を支える

このサイトのトップページに掲げた「仕組みで人を支える」という言葉は、私の原体験から来ています。

それは教室でした。漢字テストの出題順序、座席配置、掲示物の位置。小さな仕組みの積み重ねで、子どもたちの行動が変わる瞬間をたくさん見てきました。

今、職務経歴書には「AWS」や「Terraform」といった技術名を書いています。 しかしその手前にある、自分の足で観察して仕組みに落とす習慣こそが、自分の土台であり強みだと思っています。

教室で身についたこの習慣は、これからも変わらず、どんな職場でも活かしていきたいです。