問い

なぜ私の本棚には、読んでいない本が100冊も並んでいたのでしょうか。

TCP/IP、SQL、アルゴリズム、自己啓発、リーダーシップ、英語、筋トレ。ジャンルもバラバラ。

買った時は「いつか使うだろう」と思っていたけれど、3ヶ月以上開いていない本がほとんどでした。

最近、本棚を半分ぐらい空けたいなと思って、1冊ずつ「残すか手放すか」を判定していったら、残ったのは5冊だけでした。

その過程で、自分の学び方が適切じゃないのかも?という気づきがありました。

結論

私の中に、教員時代の学習モデルがそのまま残っていました。

教員は「事前に備える」のが正解の職業です。子どもたちが目の前にいる教室で、「ちょっと調べてきます」とはなかなか言えない。

だから授業の前に教材研究をして、質問を想定して、答えを覚えたりメモしていました。

エンジニアになっても、この学び方がそのまま動いていたように思います。

「これを事前に読んでおけば、実務で助かる(かも)」と思って本を買う。

でも実務で必要になる瞬間は、だいたい来ない。来ないまま本棚が埋まっていく、、

これはプログラミングで例えるとEager Loading(事前読み込み)とLazy Loading(遅延読み込み)の違いだなと気づきました。

教員モデル(Eager Loading): 事前に学ぶ → 知識を蓄える → 本番で使う
エンジニアモデル(Lazy Loading): 実務で詰まる → その場で調べる → 結果として学ぶ

教員は本番中に調べられないからEager Loadingが正解と言えそうで、エンジニアはAIやドキュメントを使いながら、その場で学ぶ場面が多い。Lazy Loading寄りの学び方のほうがより成果につながると私は感じました。

学び方そのものが、職業によって最適解が違う。

当たり前のことかもしれませんが、8年間の成功体験が身体に染みついていると、なかなか気づけないものでした。

本棚を空にするための、たった1つの問い

AIと壁打ちで相談し、100冊を判定するのに使ったのはシンプルに以下の問い1つだけにしてみました。

「この本の内容を今知りたくなった時、AIかGoogle検索で5分以内に同等の情報にたどり着けるか?」

Yes → 手放す。No → 残す。

これを1冊30秒で回していくと、驚くほどスパスパ判定できました。

TCP/IPの仕組み? AIに聞けば図解付きで返ってくるし検索で既存の図解はGetできる。

SQLの応用技法? ログをAIに読ませた方が速いだろうな。

AWS資格の対策本? もう3つ取ったし、公式ドキュメントで十分かな。思い出としてはいいけれど今後辞書代わりに引くことはなさそう。

そして残った5冊の共通点は、全て「なぜそう設計するか」を扱う本でした。いわゆるハウツーではなくWhyの本です。

設計思想やフレームワークを体系的に伝えるための本は、AIに5分で聞いても、中々同じ深さでは返ってこない。

逆に言えば、Howの本は今後需要が縮小する時代なのかもしれません。

「いつか使うかも」の正体

本棚を整理していて、もう一つ気づいたことがあります。

「いつか使うかも」で残している本の多くは、「読んでいない自分への罪悪感」で残していたということです。

買った時の「これを読めば成長できる」という気持ちの高まりと、

でもあんまり読まなかったよねという現実。

その差を埋めるために、本棚に置いておくと、「まだ読める」と思える。手放してしまうと「もう読まない」と認めなければいけない。

でも、冷静に考えると、手放した本が本当に必要になった経験はほとんどありません。

「いつか」は来ない、と言い切って良いと自分で決めました。そして95冊を処分・売却することにしました。

(ちなみに、英語学習の本が4冊あって、2回挑戦して2回挫折した記録だけが残っていました。本が手元にあっても3回目は始まらなかったので、感謝して手放しました)

「安心」と「成長」は違った

合わせて本だけでなく、Xのブックマークも整理しました。

ブクマには「全エンジニア必読」「これを知らないとヤバい」系のポストを大量にブックマークしていたのですが、読み返してみるとほとんどが既に知っていることでした。

読んだ時に感じていたのは「成長」ではなく「安心」でした。「そうそう、自分もそう思うな」という確認作業で、安心は心地いいけれど、成長にはならない。

これに気づいた時、ブックマークの大半を外すことができました。

自分の判断軸を補強してくれるものだけを残すことにしてみました。

具体的には、ウォーレン・バフェットの25/5ルール(25個書き出して5つに絞り、残り20個は「絶対やらないリスト」にする)や、SREのポストモーテム思考に通じる投稿です。

本棚の役割を再定義した

本棚の話にもどり、本棚の役割そのものを見直しました。

以前: 本棚 = 思い出と学びの記録棚
今 : 本棚 = 今のフェーズで使う道具棚(常に入れ替わる)

本を手放すのは「学びを捨てる」ことではなく、「その本から得たものは既に自分の中にある」と認めること。

私は8年間の教員生活を辞めた時、教室を手放しました。でも教員として培ったものは消えていません。業務で「教員時代の調整力」が強みになっているし、チームの合意形成でも毎日使っています。

本棚も同じかなと思います。箱を手放しても、中身は残る。残っている中身を信じる!

Lazy Loadingで生きてみる

今、本棚には5冊と、処分した95冊分の大きな余白があります。

でも100冊あった頃よりも落ち着いている気がします。

「事前に備える」学習の安心感を手放すのは、正直まだ怖いです。

通勤電車で勉強して資格を取った成功体験があるので、何もしない時間が「勿体ない」と感じてしまう自分もいます。

でも、本で事前に備えなくても、目の前の課題を1つずつ解いていけば、結果として学びは積み上がっていきます。

成果を出すために必要な分だけ学ぶ。

これが、100冊の本棚を5冊にして気づいた、自分にとっての学び方のOSです。

※ ただし、「英語を使う」「Terraformガツガツ使う」環境をこれから目指す場合などはまとまった事前学習も必要だと思います。

おまけ: 残った5冊

参考までに、残った5冊を載せておきます。

  1. SREの知識地図
  2. 大規模サービスアーキテクチャ
  3. ちょうぜつソフトウェア設計入門
  4. セキュアで信頼性のあるシステム構築
  5. データ指向アプリケーションデザイン

共通点は「なぜそう設計するか(Why)」を体系的に扱っている本です。「どうやるか(How)」の本は1冊もありません。

Howは2026年のAIが答えてくれます。Whyは、まだ人間が本で学ぶ価値があるのかなと思っています。

ちなみに、空いた本棚には子どもの絵本を置くか、本棚自体を処分しようか迷っています。

まさかここまで思い切って処分できるとは自分でも思っていなかったですが、捨てることの重要性に気づけた良い機会でした。